サークル鴨mileさんの作品「蜉蝣〜前編〜」の感想を書きました。

公式はこちらのバナーから。

 ご挨拶

 この度は、鴨mileの将生さんより「蜉蝣〜前編〜」のデータを頂きました。 コミケにも行かず、キチンとした製品だというのに、 そのお金を取らずに読んでほしいと渡して下さって事を、 この場にて心より御礼申し上げます。

 代償の代わりに意見がほしいと言う話でしたので、 レビューというのは経験の少ないことですが、 拙いながらも私が感じて、この物語に思ったことを述べようと思います。
追記・なお、私がプレイした環境はver1.00です。
 蜉蝣という作品について

 〜前編〜は約六時間に渡る2章までを収録されてます。
 1章は公式サイトにて体験版として公開されておりますが、 明らかに文量の差があるので、たかが2章ではない密度でした。 誤解がないように「たった2章」と思いませんようご注意を。

 あらすじはサイトの紹介の通り、明治文化として開かれた外の世界と、 禁足地と言われ外界から隔たれた山奥の村とを、 主人公である「吉野征治」が結びつけようと交渉に村へと入ります。

 勿論、外の人間を忌み嫌い、理解し合うには到底遠い話ですが、 1章はまずその村人との交流、和解へ至る事件を描いています。 詳しくは、体験版にてお確かめ下さい。


以下、基本的に2章について書いていきますが、 極力ネタバレのない範囲でのレビューを。
あくまで私個人の感想です。


・良かった所について


・一枚絵がかなり豊富に。

 これは特に惹かれる事でしょう。
 絵を担当としている平岡拓海さんの画力の高さから、 体験版にて乏しいと思っていた一枚絵が要所要所で頻繁に出てきます。 長い文字を読み続けるだけでは辛い所をフォローしてます。

アンジェと妹ちゃんのツーショットは悶えました。
非常にいい仕事をしております!!

・立ち絵差分の変更速度の向上。

 体験版をやっていて気になったのが立ち絵切り替えのテンポの悪さでした。 目をつぶる、表情を変える……その度に動きましたが、 微妙なウェイトがあり気になってました。 この変更は非常に文量のある2章を読むにあたって快適になっています。

・登場人物の増加と話の広がり。

 サイトにて紹介されていた外来人である「アンジェリカ」を含め、 多くの人物が出てくるようになります。
 特に、1章にて溶け込んできた村人たちとの交流は暖かく、 ヒロインの浮柚、その妹の結那と、 より親睦を深めていく姿は本当に優しいシーンでした。

・主人公の成長。

 村と街を往来として情報を集め、まとめる。
 主人公である吉野征治はある理由によって気難しいと感じる面を、 周囲との交流を得て自分を理解し、他人を気遣い、 退役軍人として疲弊した感情の成長を感情的に描く所もありました。

 それがまた物語として盛り上げる役目を努めており、 彼の視点で語られる描写を知っているからこそのカタルシスがありました。 1章でもそうでしたが、彼は非常に熱い男で好感が持てます。

・伝奇物として、ミステリーとして。

 祟りや言い伝え、怪奇な事件が続き、解き明かしていく。
 どちらにしても完成度の高く、矛盾もない話でした。 明治時代という背景を壊すことがありません。 作者が如何にしてこの背景を選んだのか、その思い入れの強さを感じます。

・文章から感じる明治時代という背景。

 基本的に横文字の使用頻度は低めです。
 あえて多用するなら特定のものについてか、アンジェリカが居るシーン辺りでしょう。 将生さんは「現代人が書いた明治風」と言いましたが、 ある意味、それが読みやすい一因と感じます。

・非常に読みやすい描写。

 無駄な描写がなく、上記の雰囲気を表した文体でも、 すんなりと読み進めることができます。 時代に沿った難しい言い回しや漢字もありますが、 行間を多く空けており、ルビもあるので読み戸惑うという事はないと思います。

 文字速度は基本的に「ふつう」でプレイ。
 一度クリックで停止する所以外は文末までは自動で表示されるため、クリックが煩わしいのもありません。 立ち絵の改善も含めてテンポは抜群ですが、 それによる弊害は、下記の気になった点で。

・伏線と情報の整理。

 この物語は多くの伏線が隠されており、これはどういう意味だろう?と 伏線の多さを覚えきれなくても、逐一に情報整理として 吉野征治なりに解釈をしてくれます。ミステリーの基本ながらも、まとめてくれるのはありがたいです。

・話のボリュームとまとめ方。

 2章だけで6時間。その文量ともなれば本一冊分です。
 読み慣れない人によっては大変に思うかもしれません。 好きな人には、雰囲気に呑まれて止まらない熱中さがあります。

 穏やかに日常を描き、怪奇な事件で謎が謎を呼ぶ。
 緊張の糸が貼り続けるわけでもなく、 アンジェリカという活動的なキャラのお陰で雰囲気はより和やか。

 体験版では、最後にしか出番のない結那でしたが、 2章では多くの登場シーン、征治との話があります。 ネタバレになるので書けませんが、 小さな積み重ねがもたらした場面は胸に響きました。可愛すぎる。

 主な事件として、村と街で繋がる奇妙な関連性。
 その事件だけに繋がる話に終わらないで、 「蜉蝣」という現時点で明らかになっている 全体を巻き込んだ怪奇な話は実に深く、丁寧に練られていた伏線と設定です。

 雰囲気的にそろそろ区切るかなと思う所もありましたが、 発生した事件は2章内にて完結しているのでご安心を。

※新verにより、以下のこと全てが改善されました。
注意書きが遅れたことをお詫び申し上げます。

・気になった点について。


・立ち絵差分高速化による弊害。

 上記で述べたように、大体このゲームはページごとに文末まで自動で表示されます。
その途中、立ち絵が台詞途中で切り替わるわけですが、 頻繁に変わる会話となるとまるで点滅をしているよう。 すぐの事とはいえ、文が途切れて見えるのがむず痒い感じでした。

 文字速度「ふつう」と「おそい」の差が対してないのが残念。

・一枚絵が豊富になったのに……

鑑賞モードがありません。代わりに音楽鑑賞があります。 その辺はパッチ等で検討するのでしょうか。

・一つだけのバグ。

2章初めからアンジェリカ登場までの間、 何故か文章速度の変更が効いてません。 それ以降は普通に動いているので大した事ではないです。

・手の届かない惜しい演出。

 気付いた範囲で二つだけですが、一応。
 前述のとおり文末までを表示しますが、 表示中にワンクリックをすれば一気に文末まで表示されます。

 一つは、征治と豊一との話し合いを開始するとき、 合図になると思う台詞を文末表示で出してしまったこと。 「えっ?」と驚くその台詞からの会話が面白いだけに、 その台詞を改ページに持ってくればと。
これは本人に伝えてあります。

 もう一つは、後半の情報整理の際に出てくる絵について。
 これもまたクリックひとつ押してしまうと連枚になる絵が 一気に飛ばされてしまうため、一枚目、二枚目……と、 一つ一つクリックで進められるなら、 情報となるだけにゆっくりと読み手も推理できると思いました。

 謎明かしとなるまとめでは、一つ一つ丁寧に説明が入っているわけですが、 その時は順序良く絵と文を眺められるだけに、一ページの事を惜しく感じます。

・最後に。

 ……さて、以上でしょうか。
 1章から続く伏線を一気に回収してきた話でもありますが、 最後の最後でまた新たなる謎で〆ています。 後半はどういった話が展開されるのか、 気になるには気になる終わり方でした。

 ですが、1章もそうでしたが、 発生した事件を綺麗にまとめて区切っているだけに、 一つの話を読み終えたという感覚が強く、 あまりに綺麗過ぎる終わり方が、良い所であり、逆に不満という矛盾。

 しかしながら、読み終えたあとに残る心地よさは保証します。 本当に、場面の盛り上がりが上手な人なんだと思わされる次第です。

・サークル「鴨mile」の今後。

 今後は創作イベント等に参加して、より積極的な活動に移るそうです。 予定までは聞いていないので何ともですが、 コミケだけじゃない所でこの前編を手にする機会が増え、 プレイする人が広がればと思います。


 では、これにて蜉蝣〜前編〜の感想を終わらせてもらいます。 改めて、鴨mileの皆様、気遣ってデータをくれた将生さん、 ありがとうございました!